高速道路での運転や大雪時の運転制限に直面した時、タイヤチェーンの使用が義務付けられることがあります。
スタッドレスタイヤを使用している車両も、特定の条件下ではタイヤチェーンが必要です。
今回は、スタッドレスタイヤとタイヤチェーンの相違点と、その併用の必要性について解説します。
スタッドレスタイヤとタイヤチェーンの機能と使い分け
雪の多い地域では、スタッドレスタイヤは欠かせないものです。
冬の低温でも柔軟性を保つゴム素材を使ったスタッドレスタイヤは、路面との接着力を高めてグリップ力を提供します。
しかし、タイヤチェーンは乾いた路面での使用は避けるべきです。
理由は、乗り心地の悪化やチェーンの耐久性低下、車体への損傷のリスクがあるからです。
雪が深い状況ではチェーンの使用が推奨されます。
そこで、スタッドレスタイヤとタイヤチェーンの利点と欠点を比較してみましょう。
スタッドレスタイヤの利点
● 低温環境下でも硬化せず、接地面積を保持してグリップ力を向上させる
● 凍結した路面でも高いグリップ力を維持
● 雪道、凍結路面、シャーベット状の路面でも、安定したグリップ性能を提供
● 通常のタイヤでは困難な降雪や凍結路面でも優れた走行性能を発揮
● タイヤチェーンと異なり、取り付けや取り外しの手間が不要
スタッドレスタイヤの欠点
● タイヤチェーン必須の区間では走行が困難
● タイヤチェーンに比べ制動力が劣る
● タイヤチェーンよりも価格が高い
● カーブや凹凸のある路面では、通常のタイヤに比べ揺れやすい
● 通常の乾燥路面での使用はタイヤの摩耗を早める
● 季節ごとのタイヤ交換が必要
● 夏期にスタッドレスタイヤの保管場所が必要
タイヤチェーンの利点
● タイヤチェーン規制区間でも走行可能
● スタッドレスタイヤよりも制動力が優れている
● スタッドレスタイヤよりも入手が容易
● コンパクトに収納できる
タイヤチェーンの欠点
● 乗り心地が劣る
● 取り付け・取り外しが面倒
● 装着が不適切だと車体を傷つけるリスクがある
スタッドレスタイヤとタイヤチェーンの同時使用
この記事を読んでいる方の中には、「スタッドレスタイヤとタイヤチェーンを同時に使うことはできないのでは?」と疑問を持つ方がいるかもしれません。
また、スタッドレスタイヤにタイヤチェーンを装着することに違和感を覚える方もいるでしょう。
しかし、実際には「全車両チェーン規制」という、スタッドレスタイヤのみでは不十分とされる場合があります。
これは、スタッドレスタイヤとタイヤチェーンが併用可能であることを意味します。
スタッドレスタイヤは近年進化していますが、あらゆる悪条件に対応できる訳ではありません。
特に雪が予想される天候や雪山へのドライブの際は、スタッドレスタイヤとタイヤチェーンを同時に使用できるよう、チェーンを常備することをお勧めします。
雪道を走行するためには、この併用が推奨されます。
チェーン規制の実施状況
チェーン規制は一般道と高速道路の両方で実施されているため、それぞれの詳細をご紹介します。
<一般道におけるチェーン規制区間>
山形県:月山道路(西川町月山沢~鶴岡市田麦俣)15.2km
山梨県・静岡県:山中湖・須走(山梨県山中湖村平野~静岡県小山町須走字御登口)8.2km
新潟県:大須戸~上大島(村上市大須戸~村上市上大鳥)15.3km
福井県:石川県境~坂井市(あわら市熊坂~あわら市笹岡)3.2km
広島県・島根県:赤名峠(広島県三次市布野町横谷~島根県飯南町上赤名)2.5km
愛媛県:鳥坂峠(西予市宇和町~大洲市北只)7km
<高速道路におけるチェーン規制区間>
新潟県・長野県:上信越道(信濃町IC~新井PA(上り線))24.5km
山梨県:中央道(須玉IC~長坂IC)8.7km
長野県:中央道(飯田山本IC~園原IC)9.6km
石川県・福井県:北陸道(丸岡IC~加賀IC)17.8km
福井県・滋賀県:北陸道(木之本IC~今庄IC)44.7km
岡山県・鳥取県:米子道(湯原IC~江府IC)33.3km
広島県・島根県:浜田道(大朝IC~旭IC)26.6km
スタッドレスタイヤを装着していても、チェーン規制が発令された際には、規制区間ではチェーンを装着していなければ通行ができません。チェーン規制は、「大雪特別警報」や「大雪に対する緊急発表」「異例な緊急発表」などの場合に発令されます。
スタッドレスタイヤとタイヤチェーンが必要となる状況
スタッドレスタイヤやタイヤチェーンが必要となる具体的な状況について説明します。
新雪路面の場合
新雪路面は、継続的に降り積もった雪に覆われた路面を指します。
これは冬季の路面の中では比較的滑りにくいものの、道路の境界が不明瞭になりやすく、風による雪の舞い上がりで視界が悪化することがあります。
特に凍結路面の上に新雪が積もっている場合は、滑りやすさに気付きにくいものです。
新雪路面にはタイヤチェーン推奨
現代のスタッドレスタイヤは、ミラーバーン状態に強い設計ですが、新雪や粉雪の路面では弱点を持ちます。
新雪路面では、タイヤの溝が雪で詰まりやすく、タイヤの性能が低下し、スリップしやすくなります。
圧雪路面の場合
圧雪路面は、雪が降った後に車の通行によって固められた路面です。
滑りにくく比較的走行しやすい路面ですが、下に凍結路面が隠れている可能性もあるため注意が必要です。
また、スピードを出しすぎないことや、わだちによるハンドルの取られを避けるために急なハンドル操作を控えることが重要です。
圧雪路面にはスタッドレスタイヤ推奨
圧雪路はスタッドレスタイヤにとって最も得意とする路面です。
スタッドレスタイヤは、雪をしっかりと噛む特性があり、圧雪路面ではその性能を最大限に発揮することができます。
シャーベット状の路面への対応
気温の上昇や車の熱などによって、道路上の雪が溶けてシャーベット状になることがあります。
このような路面は、グリップ力が場所によって変わり、タイヤと路面の間の水分により駆動力の伝達が妨げられます。
また、シャーベット状の路面の下が凍結している可能性もあります。
シャーベット状の路面にはタイヤチェーン推奨
シャーベット状の雪道は、非常に滑りやすいです。
滑ると止まりにくいため、最悪のコンディションと言えます。
スタッドレスタイヤだけでは対応が難しく、制動力が強いタイヤチェーンの使用が推奨されます。
凍結路面(アイスバーン)への対応
凍結路面はスケートリンクのようで、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンを使用しても簡単には止まれません。
凍結路面では、スピードを落として一定速度を保ち、急なハンドル操作を避け、慎重に運転することが重要です。
特に交差点、トンネルの出入り口、橋などは凍結しやすいため、早めの減速と慎重な運転が求められます。
凍結路面にはタイヤチェーン推奨
あるテストによると、9%の勾配がある氷の路面では、スタッドレスタイヤだけでは発進できないが、スタッドレスタイヤとタイヤチェーンの組み合わせなら発進可能であることが示されています。
凍結路面においてタイヤチェーンは非常に有効です。
特に、圧雪路面では効果が低いかもしれないタイヤチェーンも、金属製のピンが氷に食い込むことでグリップ力を大幅に向上させることができます。
まとめ:スタッドレスタイヤとタイヤチェーンの使い分け
この記事を通して、スタッドレスタイヤとタイヤチェーンのそれぞれの必要性と適用状況について理解いただけたかと思います。
スタッドレスタイヤとタイヤチェーンを両方用意しておけば、多くの状況に対応できますが、重要なのは、どちらを使用しても走行できないほど悪い天候や路面状態になることもあるということです。
極端に悪い天候や路面状態の時は、無理に外出せず、状況が改善するまで待つことが賢明です。
適切なタイヤの選択と運転方法を取り入れることが、冬季の運転において最も重要です。